SHOWAの耐海水腐食用バルブ
海水による腐食を防ぐ方法は様々ありますが、一般に金属製バルブの防食対策には下記の方法が採用されています。
当社で製作する海水用バルブには、上記 1.~4.の方法の中から、バルブサイズや用途に応じて、1.環境遮断による防食対策、及び、2.耐食性材料による防食対策を施しております。また、海水に使用されるバルブであっても、防食対策よりもそのバルブの持つ特殊機能に重点を置いた製品も製作しております。
各製品の詳細は下記リンクにてご覧頂けます。
1.環境遮断
塗装(コーティング)、ライニング、メッキ等により流体とバルブ表面の接触を遮断し、流体が直接金属面に触れないようにする方法です。当社ではゴムライニングやナイロンコーティングにより対応しています。金属製バルブの防食対策としては最適の方法とされていますが、施行性の観点から小口径のバルブには不向きです。
2.耐食性材料の使用
比較的腐食に強く機械的な強度もある耐食性材料にステンレス鋼があります。但し、ステンレス鋼を用いても腐食が全く発現しないわけではありません。ステンレス鋼の腐食形態には全面腐食、粒界腐食、孔食、すきま腐食、応力腐食割れ等がありますが、このうち局部腐食の代表例が孔食です。ステンレス鋼の耐孔食性を高めるためにはCr(クロム)、Mo(モリブデン)およびN(窒素)の添加が有効ですが、これらの添加元素が耐孔食性にどの程度影響を及ぼしているかを指数として表しているのがPREと呼ばれる孔食指数(A表参照)です。一般に日本近海等の比較的きれいな海水の場合に必要とされる孔食指数(PRE)は22程度とされており、SUS316,SUS316L,SCS14,SCS14A,SCS16,SCS16Aクラスのオーステナイト系ステンレス鋼を使用すれば孔食を防げると言われています。但し、鍛造や溶接により不動態皮膜を形成できない「鋭敏化」状態となったままで固溶化熱処理を施さない場合、耐孔食性は著しく低下します。
また、電位差(B表参照)によって引き起こされるガルパニック腐食を防ぐ為に、バルブ以外の配管材とバルブ材質の間で、電位が大きく異なる選択は避けなければなりません。その他、同じ海水でも中近東周辺の海域では油田地帯から流れ込む硫黄が含まれており、海水温も高く孔食指数(PRE)は32程度が必要と言われていますので、一般的なオーステナイト系のステンレス鋼で完全な防食効果を期待するのは難しいでしょう。
3.電気防食
金属製バルブに特殊な構造を付加し、使用している材料よりも海水に侵され易い犠牲陽極を取り付けてバルブ側の防蝕を行う方法です。但し、犠牲陽極は消耗品であり定期的な交換に伴うコストは多大となります。また、近年では環境面への配慮から犠牲陽極材料の亜鉛やアルミニウムが有害物質として避けられる場合も増えてきています。プラント等の大規模な設備では、外部電流を流すことにより防食を行う方法もありますが、これは装置メーカー様や建設業者様にて対応することになります。
4.環境処理
流体にアンモニアを混ぜアルカリ雰囲気にする方法ですが、バルブメーカーでは対応できませんので、プラン卜管理者様やエンドユーザー様にて対応することになります。
A表
主なステンレス材料の孔食指数(PRE)及び海水への適合度一覧表
材料記号 | C | Si | Mn | P | S | Ni | Cr | Mo | N | 他 | PRE | 適合度 |
SUS410 | 0.15 | 1.00 | 1.00 | 0.040 | 0.03 | 11.5 | 11.5 | × | ||||
SUS403 | 0.15 | 0.50 | 1.00 | 0.040 | 0.03 | 11.5 | 11.5 | × | ||||
SUS430 | 0.12 | 0.75 | 1.00 | 0.040 | 0.03 | 16.0 | 16.0 | × | ||||
SUS420J2 | 0.40 | 1.00 | 1.00 | 0.040 | 0.03 | 12.0 | 12.0 | × | ||||
SUS630 | 0.07 | 1.00 | 1.00 | 0.040 | 0.03 | 3.00 | 15.0 | Cu,Nb | 15.0 | × | ||
SUSY308 | 0.08 | 0.65 | 2.50 | 0.030 | 0.03 | 9.00 | 19.5 | 19.5 | × | |||
SUS302 | 0.15 | 1.00 | 2.00 | 0.045 | 0.03 | 8.00 | 17.0 | 17.0 | × | |||
SUS304 | 0.08 | 1.00 | 2.00 | 0.045 | 0.03 | 8.00 | 18.0 | 18.0 | × | |||
SUS304N1 | 0.08 | 1.00 | 2.50 | 0.045 | 0.03 | 7.00 | 18.0 | 0.10 | 19.6 | × | ||
SUS316 | 0.08 | 1.00 | 2.00 | 0.045 | 0.03 | 10.0 | 16.0 | 2.00 | 22.6 | ○ | ||
SUS316N | 0.08 | 1.00 | 2.00 | 0.045 | 0.03 | 10.0 | 16.0 | 2.00 | 0.10 | 24.2 | ○ | |
SUS316L | 0.03 | 1.00 | 2.00 | 0.045 | 0.03 | 12.0 | 16.0 | 2.00 | 22.6 | ○ | ||
SUS329J4L | 0.03 | 1.00 | 1.50 | 0.040 | 0.03 | 5.50 | 24.0 | 2.50 | 0.08 | 33.5 | ◎ | |
SCS1 | 0.15 | 1.50 | 1.00 | 0.040 | 0.04 | 11.5 | 11.5 | × | ||||
SCS2 | 0.24 | 1.50 | 1.00 | 0.040 | 0.04 | 11.5 | 11.5 | × | ||||
SCS13 | 0.08 | 2.00 | 2.00 | 0.040 | 0.04 | 8.00 | 18.0 | 18.0 | × | |||
SCS13A | 0.08 | 2.00 | 1.50 | 0.040 | 0.04 | 8.00 | 18.0 | 18.0 | × | |||
SCS14 | 0.08 | 2.00 | 2.00 | 0.040 | 0.04 | 10.0 | 17.0 | 2.00 | 23.6 | ○ | ||
SCS14A | 0.08 | 1.50 | 1.50 | 0.040 | 0.04 | 9.00 | 18.0 | 2.00 | 24.6 | ○ | ||
SCS16 | 0.03 | 1.50 | 2.00 | 0.040 | 0.04 | 12.0 | 17.0 | 2.00 | 23.6 | ○ | ||
SCS16A | 0.03 | 1.50 | 1.50 | 0.040 | 0.04 | 9.00 | 17.0 | 2.00 | 23.6 | ○ |
(注記)
※表中の化学成分率は、Ni, Cr, Mo, N は最小含有量、その他は最大含有量を示しています。
※孔食指数(PRE)は、MoとNの含有率を下記の公式によりCr含有率に換算して評価した指数です。
PRE=Cr(%)+3.3 × Mo(%)+16 × N(%)
※適合度は下記の3段階で評価しています。
○ | : | 日本近海程度の比較的きれいな海水に適合 |
◎ | : | 中近東周辺の腐食性の高い海水にも適合 |
× | : | 不適合 |
B表
海水中における金属の自然電位(電位が高いほど耐腐食性に優れています)
材料 | 電位 | |
貴
金 属 側 ↑ |
白金 | +0.33V |
金 | +0.18 | |
316ステンレス(不動態化) | -0.05 | |
銀 | -0.06 | |
304ステンレス(不動態化) | -0.08 | |
モネル(67Ni-30Cu) | -0.10 | |
キュプ口ニッケル(70Cu-30Ni) | -0.13 | |
青銅(Sn6-10%) | -0.14 | |
黄銅(85Cu-15Zn)C2300 | -0.15 | |
銅 | -0.17 | |
(標準水素電極) | -0.24 | |
黄銅(60Cu-40Zn) | -0.27 | |
304ステンレス(鋭敏化) | -0.28 | |
すず | -0.46 | |
鉛 | -0.50 | |
鉄・鋳鉄 | -0.45~0.65 | |
ジュラルミン | -0.61 | |
カドミウム | -0.78 | |
アルミニウム | -0.78 | |
亜鉛 | -1.07 | |
マグネシウム | -1.60 |